美波「わがまま」

 

 

 

P「…撮影お疲れさま、美波」

美波「あっ、プロデューサーさん!お疲れ様ですっ」

美波「その…私のドレス姿、どうでした…?」

P「ああ、すっごく似合ってるよ。まるで本物の花嫁さんみたいだ」

美波「…もうっ、そんなこと言って…」

美波「…でも、嬉しいです。ありがとうございますっ」

P「はは…いやしかし、美波の花嫁姿かぁ」

P「…なんか、感慨深いというか…」

美波「ふふっ、なんですかそれ…」クスッ

P「いっ、いいだろ別に…」

美波「…ねっ、プロデューサーさん」

 

美波「少しだけ、お話がしたいです」

 

 

 

 

美波「…ありがとうございます、プロデューサーさん…まさかヴァージンロードなんて歩かせていただけるなんて…」

P「…何か思うところがあるんだろ?ちゃんと許可も取ったし、聞かせてくれよ。美波の思い」

P「あいにくタキシードは着れないけど、こうして隣に並んではあげられるからさ」

 

美波「…といっても、ほんとに大したことじゃないんです」

美波「ただその…結婚って、女の子の一つの目標というか、ゴールじゃないですか」

美波「でも私はアイドルで、アイドルが結婚するってことは、つまりアイドルとしては終わるってことで…」

美波「…そしたら、事務所のみんなともプロデューサーさんとも会えなくなるんじゃないか、って…」 

美波「…ちょっと、いろいろ考えちゃったんです」 

P「…」 

 

 

P「…美波は、どっちも欲しいか?」

P「アイドルとしての今の幸せと、結婚して得られる女の子としての幸せ」

美波「…私は、わがままなんて言える立場じゃありませんから」

美波「そんなの…選べません」

P「…今日だけでいい、本心を聞かせてくれ」

P「そのために俺がそばにいるんだ」

美波「…私は…」

 

 

…思えば、いつもこうやって他人に遠慮してきた気がする。

謙遜したり、譲ったり、甘んじたり…

『お姉さんだから』他人を立てるのか?

『自分のためになるから』重荷を引き受けるのか?

…違う、きっと私は…

 

 

美波「…プロデューサーさん」

 

臆病なだけだったんだ。

人にモノが言えない、ただそれだけのこと。

…だったら、

 

美波「私は、幸せになりたいです」

 

 

 

美波「アイドルとしてもっともっと活動して」

美波「お仕事だってもっとたくさんこなして」

美波「…そして、ゆくゆくはトップアイドルになって」

美波「そうしたら…その、好きな人と一緒になって」

美波「"結婚"…したいです」

P「…美波…」

 

 

P「…ちゃんと、言えるようになったんだな」

P「正直、心配だったんだ…ちょっと年上だからって、美波にはみんなの世話役なんて押しつけてしまって」

P「…そのせいで、いつも一歩引いてしまってるというか…なんだか、影を感じてしまっていてな」

 

美波「そんな、プロデューサーさんのせいじゃないです」

美波「結局は、私の心が弱かっただけ…言いたいことも言えずに萎んでしまっていた、ただそれだけなんです」

美波「…それに、こんなにわがままを言えるなんてきっと今日だけです」

美波「…明日の私は、また臆病なまま…」

P「…大丈夫」

 

P「…今日は一歩踏み出せた、なら」

P「明日はもう一歩踏み出せばいい」

P「その一歩の積み重ねが、やがてはゴールにたどり着くんだ」

 

P「手助けなら、俺がしてやる。そのために俺が、プロデューサーがいるんだから」 

 

 

美波「…っ」

P「そうさ、俺だけじゃない。アーニャも蘭子も、事務所のみんなを頼っていいんだ」

P「みんな、美波に感謝してる。その感謝のぶんだけ、美波にお返ししてくれるだろうさ」

美波「…でも」

P「ほら、また"遠慮"してるぞ。いいか、なんでみんな美波のことをあんなに慕ってるか分かるか?」

 

 

P「みんな、美波のことを愛してるんだよ」

 

 

美波「…愛…ですか…?」

P「そうだ。美波が優しいからみんな美波に優しくしたがるし、美波が親切だからみんな美波に親切にしたがる」

P「尽くしても尽くしきれない感謝の形、それが愛なのさ」

美波「…そんな、大袈裟じゃないですか」

P「いーや、間違ってない。俺だって美波のことを愛してるさ」

美波「っっっ!!ちょっとプロd」

P「なにせ性格はいいし、人当たりもいい。おまけに文武両道の才色兼備ときた。惚れない理由がないだろう」

美波「その辺にしt」

P「ダンスは上手い、歌も上手い。ビジュアル抜群の三拍子だ、アイドルとしても一流だぞこりゃ」

美波「…ス、」

 

美波「ストップですーっ!」バチーン

P「痛ぇっ!」

 

 

 

P「…まぁ、そういうことだ。みんな美波が好きなんだよ」ヒリヒリ

美波「もうっ、好き勝手言って…」

美波「…でも、ありがとうございました」

P「…まぁ、礼には及ばないよ。元はと言えば、俺が美波のことをきちんと見れてなかっただけの話だからな」

美波「…そういうことにしておきます」

P「はは、埒があかなくなるからな…しかし、美波も結婚したいとか思ってたんだなぁ」

美波「まぁ、その…人並みには」

美波「…ねっ、プロデューサーさん」

美波「このウェディングドレス、いつか私もちゃんと着れる日が来るんでしょうか」

美波「アイドルじゃなく、一人の花嫁として…"新田美波"として」

P「そうだな…まだ大分先の話になるとは思うが」

P「でも大丈夫、美波ならきっといい相手が見つかるよ」

美波「…『相手』って…そんなの決まってるじゃないですか」

P「…えっ?」

美波「なんでもないですっ。…ばか、意気地なし」

P「えええ」

美波「ふんだ」プイッ

P「…えぇー…?」

 

美波「…ふふっ♪」

 

 

 

 

貴方を信頼しているから。

貴方にだけは甘えられるから。

貴方には、本当の私を知ってほしいから。

 

だから、本音で…

 

 

 

「大好きです、プロデューサーさん」

 

 

 

おわり

多分Pはあくまでも"アイドル"として美波が好きなんだろうなぁ、と

その辺の線引きは結構きっちりしてそうな気がします

でも美波すき